明日から3日坊主

誰も見てない躁鬱劇場

短編「拡張」

部屋が広くなっている。

 

そのことに気づいたのはワンルームのアパートに越してきてから2ヶ月が経った頃だった。

 


本来トイレがあった場所にもう一つ部屋が存在しているのである。普通に考えればこれはおかしい。トイレはどこへ行ったのだ。これ以上突き詰めると催してきそうだったため、やめた。

 

 

 

 

入る。外は暗闇に包まれていたが、その夢の部屋は照明が部屋全体を明るく映し出していた。今初めて発見したにも関わらず、そこはホコリひとつ散っていない綺麗な部屋で二段ベッドの存在を確認できた。布団は赤い水玉模様だ。

 


その奥は薄暗いが、更なる部屋の存在を覗かせていた。

 

 

 


「なん…だ……?これは………」

 


そこは建てられたばかりの大学構内のような広い吹き抜けの空間が広がっていた。下の階が確認できた。さらにその下、その下の階が……これ以上覗くと「理解」してしまいそうになったため、やめた。

 


ずらりと部屋が並んでおり、その部屋の一つ一つが広い。既に元居た部屋の様相は消え失せていた。

 


その部屋の一つに入る。壁には棚が取り付けられており、食器の存在を確認することができた。それ以外何もない部屋で一体これらを何に使うのだろうか………

 

 

 


ここで記憶は終わっている。時既に遅し、残念ながら「理解」してしまったのだ。

 

 

 


今日も生きなければならない。狭い世界を